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呪術廻戦

【呪術廻戦】伏黒甚爾はなぜ人気?フィジカルギフテッドの強さと不器用な父の愛を考察

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「術師殺し」「天与の暴君」。
そしてファンからは愛情を込めて「パパ黒」と呼ばれる男、伏黒甚爾。
『呪術廻戦』において、呪力を一切持たないにもかかわらず最強の呪術師・五条悟を一度は打ち倒したという衝撃的な戦績を持つ人物です。

呪術全盛の世界で、呪力ゼロという絶対的なハンデを背負いながらも術師たちを圧倒する戦闘力。
御三家・禪院家に生まれながらも家を捨て、殺し屋として裏社会を渡り歩いた壮絶な人生。
そして、その「呪い」に満ちた生涯の中で唯一残った「祝福」、息子・恵への想い。

この記事では、伏黒甚爾のプロフィール・能力・呪具・過去・渋谷事変での復活と最期に至るまで、彼のすべてを徹底的に解説します。
さらに、「呪い」と「祝福」という独自の視点から甚爾の人生を読み解く考察もお届けします。

※この記事は『呪術廻戦』のネタバレを含みます。

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伏黒甚爾のプロフィール

まずは伏黒甚爾の基本情報を整理しましょう。

項目 内容
名前(読み方) 伏黒甚爾(ふしぐろ とうじ)/旧姓:禪院甚爾
声優 子安武人
誕生日 12月31日
所属 元・禪院家 → フリーの殺し屋
異名 術師殺し、天与の暴君
術式 なし(呪力完全ゼロ)
天与呪縛 フィジカルギフテッド
家族 妻(旧姓・伏黒)、息子・伏黒恵
好きなもの 肉、モツ
趣味 ギャンブル(競馬は外すとされている)

『呪術廻戦』強さランキングでは第4位にランクインしている甚爾は、呪術界の御三家のひとつ・禪院家の出身であり、当主である禪院直毘人の兄にあたる人物です。
しかし、呪力を一切持たないことから禪院家での居場所を失い、やがて家を出奔。
伏黒姓の女性と結婚し婿入りしたことで「伏黒甚爾」の名を得ました。

声優を務める子安武人さんの低く落ち着いた声質が、甚爾の持つ不敵さと底知れぬ危険性を見事に表現しており、アニメでの登場はファンの間で大きな反響を呼びました。
人気投票では第2回で9位、第3回で11位を記録しており、登場エピソードが限られているにもかかわらず高い人気を誇るキャラクターです。

 

人物像・性格:禪院家に壊された男の素顔

伏黒甚爾を語る上で避けて通れないのが、禪院家での壮絶な幼少期です。

禪院家での虐待と人格形成

禪院家は呪術界の御三家の中でも、特に術式や呪力を重視する実力至上主義の家柄として知られています。
そんな家に、呪力を一切持たない子どもとして生まれた甚爾がどのような扱いを受けたかは想像に難くありません。

作中では、幼い頃に呪霊の群れに放り込まれるような虐待を受けていたことが示唆されています。
呪力を持たない甚爾にとって、呪霊が蠢く環境は通常であれば致命的なもの。
しかし天与呪縛による超人的な肉体がそれを生き延びさせたのです。
この経験が、甚爾の人格に深刻な影響を与えたことは間違いないでしょう。

 

「自分も他人も尊ぶことのない」男

甚爾は作中で、自分自身の命にも他者の命にも等しく無頓着な人物として描かれています。
殺しの依頼を淡々と遂行し、命を奪うことに葛藤を見せない。
かといって殺しそのものに快楽を見出すわけでもなく、そこにあるのは圧倒的な「虚無」です。

この虚無感は、禪院家での経験に根ざしていると考えられます。
呪力を持たないというだけで人間以下の扱いを受け続けた幼少期は、彼から自己肯定感を奪い去りました。
自分を大切にできない人間が、他者を大切にすることは難しい。
甚爾の生き方は、禪院家という「呪い」が生んだ必然だったのかもしれません。

 

ヒモ・殺し屋・ギャンブラーの日常

禪院家を出た後の甚爾は、殺し屋として裏社会で暗躍する一方、いわゆる「ヒモ」として女性の元を渡り歩く生活を送っていたとされています。
ギャンブル好きでありながら競馬は当たらないという、どこか人間臭いエピソードも。
酒は全く酔わない体質とされており、これも天与呪縛による強靭な肉体ゆえかもしれません。

しかし、この破天荒な生き方の裏に見え隠れするのは、深い虚無感です。
自分の価値を見出せないまま、その日暮らしの刹那的な生を続ける甚爾の姿は、どこか痛々しさすら感じさせます。

 

妻との出会いと人間性の残滓

そんな甚爾にも、人間性が垣間見える瞬間がありました。
伏黒姓の女性との結婚、そして息子に「恵」という名を付けたことです。
「恵」は「めぐみ」と読み、「恩恵」「恵み」を意味する名前。
呪術の世界において「呪い」の対極にある「祝福」を示す名を我が子に授けた行為は、甚爾の中にわずかに残った人間的な感情の発露といえるでしょう。

この点については、後の独自考察セクションでさらに深く掘り下げます。

 

能力・戦闘スタイル:天与呪縛とフィジカルギフテッドの真価

伏黒甚爾の最大の特徴は、「天与呪縛」によるフィジカルギフテッドの肉体です。
呪術の世界において呪力を持たないことは致命的な弱点であるはずですが、甚爾はそのハンデを超越する身体能力を手にしています。

天与呪縛の仕組み

「天与呪縛」とは、生まれながらに身体に課された縛りのことです。
呪術廻戦の世界では、何らかの制約と引き換えに別の力を得る仕組みが存在し、天与呪縛はその生得的なバージョンといえます。

多くの天与呪縛の持ち主は「一般人程度かそれ以下の呪力」しか持たない状態で身体能力の強化を得ています。
しかし甚爾の場合は根本的に異なります。
彼は呪力を「微量しか持たない」のではなく、文字通り「完全にゼロ」。
この極限の縛りこそが、他の天与呪縛の持ち主とは次元の異なる身体能力をもたらしているのです。

 

フィジカルギフテッドの驚異的なスペック

甚爾のフィジカルギフテッドがもたらす能力は多岐にわたります。

超人的な身体能力

純粋な膂力・速度・反応速度のすべてが人間の域を超えています。
高専時代の五条悟や夏油傑といった特級相当の術師を相手にしても、フィジカルのみで圧倒するほどの戦闘力を発揮しました。

五感による呪霊の知覚

通常、呪霊を視認するには呪力が必要です。
しかし甚爾は、極限まで研ぎ澄まされた五感によって呪霊を知覚することが可能です。
呪力に頼らない独自の知覚能力は、術師とは全く異なるアプローチで呪いの世界に対処できることを意味します。

完全なステルス性

呪力がゼロであるということは、裏を返せば呪力による探知が一切通用しないということです。
術師や呪霊が気配を察知する際に頼る呪力の波動を甚爾は一切発しません。
これにより、文字通り「暗殺者」として最適な特性を有しています。
「術師殺し」の異名が伊達ではないことがわかるでしょう。

結界の素通り

呪力をベースとした結界は甚爾には効果がありません。
呪力を検知して侵入を阻む仕組みが、呪力ゼロの甚爾にはそもそも反応しないためです。

領域展開の必中効果の無効化

呪術の最終奥義ともいえる領域展開は、その内部にいる者に対して必中効果を付与します。
しかし、必中効果は呪力を介して相手に干渉するため、呪力が完全にゼロの甚爾にはこの必中効果が及ばないとされています。
これは領域展開が事実上の必殺技である呪術の世界において、極めて特異なアドバンテージです。

内臓まで及ぶ強化

甚爾の肉体強化は外面だけにとどまりません。
内臓に至るまで強化されており、毒を持つ呪霊を飲み込んでも平然としていられるほどです。
このことは、武器庫呪霊を体内に格納するという戦術を可能にしています。

 

禪院真希との対比

甚爾と同じ天与呪縛の持ち主として、禪院真希の存在は重要な対比を成しています。
真希は当初、一般人程度の呪力しか持たない不完全な天与呪縛の状態にありました。
しかし双子の姉妹である真依が命を落としたことで呪力の枷が完全に外れ、甚爾と同等の「完全な呪力ゼロ」のフィジカルギフテッドへと覚醒しています。

同じ禪院家に生まれ、同じ天与呪縛を持ちながら、二人が選んだ道は対称的です。
甚爾は禪院家から「逃げた」のに対し、真希は禪院家を「壊した」。
この構造的な違いについては、独自考察のセクションで詳しく分析します。

 

呪具一覧:術師殺しの武器庫

呪力を持たない甚爾が術師と渡り合えるもうひとつの要因が、強力な呪具の数々です。
呪具とは呪力が込められた武器であり、使い手自身に呪力がなくても呪霊に対して有効打を与えることができます。
甚爾は複数の呪具を巧みに使い分け、あらゆる状況に対応する「術師殺し」のスタイルを確立しました。

 

天逆鉾(あまのさかほこ)

甚爾を象徴する呪具のひとつです。
この特級呪具は、あらゆる術式を強制的に解除するという極めて特殊な効果を持っています。

五条悟との戦いにおいて、五条の術式「無下限呪術」を強制解除するために使用されました。
触れた対象の術式を無効化するこの能力は、術式に依存する呪術師にとってまさに天敵。
「術師殺し」という異名にふさわしい呪具といえます。

なお、天逆鉾は五条がその後処分したとされており、現在は存在しないと語られています。

 

万里ノ鎖(ばんりのくさり)

一方の端を観測されていない限り無限に伸び続けるという特性を持つ鎖です。
甚爾はこの鎖の一端を武器庫呪霊に飲み込ませ、もう一端にフックを付けて天逆鉾を装着するという連携運用をしていました。

この鎖の特性は、奇襲や中距離からの攻撃に活用され、甚爾の戦術の幅を大きく広げる役割を果たしています。

 

釈魂刀(しゃっこんとう)

物質の硬度を無視し、魂を直接切り裂くことができる刀です。
物理的な防御を一切無視して対象の魂にダメージを与えるという恐ろしい性能を持ちます。
ただし、その能力を十全に発揮するには、無生物の魂すら視ることができる眼が必要とされています。

甚爾の超人的な五感があればこそ使いこなせる呪具であり、フィジカルギフテッドと呪具の相性の良さを体現するアイテムです。
その価値は5億円とも言われ、呪具としても極めて希少な存在です。

 

游雲(ゆううん)

術式を付与されていない唯一の特級呪具です。
術式がないぶん、使い手の純粋なフィジカルがそのまま威力に直結します。
つまり、人間離れした身体能力を持つ甚爾が振るえば、その破壊力は計り知れません。

渋谷事変で復活した甚爾が使用し、特級呪霊・陀艮を瞬殺するという驚異的な戦果を挙げています。
なお、游雲はその後禪院真希に受け継がれ、覚醒後の真希の主要武器となりました。

 

武器庫呪霊

甚爾が使役する、芋虫のような外見をした呪霊です。
特級呪具を含む複数の呪具をこの呪霊の体内に格納し、必要に応じて取り出すという運用をしていました。
さらに、甚爾自身がこの呪霊を丸ごと飲み込むことで、呪具の呪力を完全に隠匿することも可能です。

これにより、呪力ゼロの甚爾が呪具の呪力まで隠した状態で接近し、奇襲を仕掛けるという「術師殺し」の必勝パターンが成立していました。
五条悟の六眼ですら甚爾の接近を察知できなかったのは、この武器庫呪霊を活用したステルス戦術あってのことです。

 

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過去と生涯:禪院家から伏黒家へ【ネタバレ注意】

ここからは『呪術廻戦』過去編(懐玉・玉折)の重大なネタバレを含みます。

甚爾の人生は、呪術界の歴史を大きく変えた転換点と密接に結びついています。
彼の行動がなければ、五条悟の覚醒も、夏油傑の闇堕ちも起こらなかった可能性があるのです。

 

禪院家での幼少期と出奔

前述の通り、甚爾は禪院家において呪力ゼロの異端者として虐げられて育ちました。
やがて禪院家を出奔し、フリーの殺し屋として裏社会に身を投じます。
この時点で、甚爾は呪術の世界における「社会的な死」を迎えたといえるでしょう。

 

伏黒家への婿入りと「恵」の誕生

禪院家を離れた甚爾は、伏黒姓の女性と出会い結婚します。
彼女との間に授かった息子に「恵」と名付けたのは、甚爾自身の意思でした。

「恵」という名には「恩恵」「祝福」の意味が込められています。
呪術の世界で「呪い」に対する対概念ともいえる「祝福」を我が子に託した事実は、甚爾の中にまだ完全には死に切っていない人間性があったことを示しています。

しかし、妻の死後、甚爾は恵を禪院家に売り渡す交渉を進めることになります。
自分が受けた地獄と同じ場所に我が子を送ろうとしたこの行為は一見矛盾していますが、恵が十種影法術という禪院家相伝の術式を引き継いでいたことで、禪院家での扱いが自分とは異なるだろうという打算があったとも考えられます。

 

星漿体護衛任務:五条悟との激闘

物語の大きな転換点となるのが、星漿体・天内理子の暗殺任務です。
星漿体とは、不死の術式を持つ天元と同化するために必要な適合者のこと。
天元の同化を阻止しようとする宗教団体「盤星教」の依頼を受け、甚爾は天内理子の暗殺を請け負います。

護衛を担当していたのは、高専二年生の五条悟と夏油傑。
当時から既に呪術界でも屈指の実力者であった二人を相手に、甚爾は周到な戦略で挑みます。

まず、他の刺客たちを差し向けて五条に「無下限呪術」を長時間使わせ続け、呪力と体力を消耗させるという下準備を行いました。
そして万全の態勢が崩れたところを急襲。
天逆鉾で無下限呪術を強制解除し、五条を致命傷に至らしめました。

この勝利は、呪力を一切持たない人間が最強格の術師を打ち倒したという、呪術界の常識を根底から覆す出来事でした。

 

天内理子の死と物語への影響

五条を退けた甚爾は、夏油傑をも圧倒し、天内理子の暗殺に成功します。
しかし、この任務の結末が引き起こした波紋は甚爾の想像をはるかに超えるものでした。

天内理子の死を受け、瀕死の状態から反転術式を独力で会得した五条は、前代未聞の覚醒を遂げます。
一方、天内理子の死に際して盤星教の信者たちが歓喜する光景を目の当たりにした夏油は、人間への不信感を深めていくことになります。

甚爾のひとつの任務が、五条の覚醒と夏油の闇堕ちという二つの歴史的事件の引き金を引いたのです。

 

覚醒した五条との再戦と死

反転術式を会得し、術式順転と反転術式を組み合わせた新たな力「虚式・茈」に目覚めた五条と再戦した甚爾は、圧倒的な力の差の前に敗北します。

この際、致命傷を負った甚爾が最後に口にしたのは、息子・恵に関する情報でした。
具体的には、息子が禪院家に売られようとしていることを五条に伝えたとされています。
これを「好きにしろ」という趣旨の突き放した言葉とともに託したとされる甚爾。
しかし、あえて敵である五条にこの情報を伝えたこと自体が、恵を禪院家から救ってほしいという無意識の願いだったのではないか――という解釈も成り立ちます。

この言葉を受けた五条が恵を引き取る後ろ盾となったことで、恵は「伏黒」の姓のまま成長することになりました。
甚爾が最期に残した情報が、結果として息子を守ったのです。

 

渋谷事変での復活と最期:「よかったな」の意味【ネタバレ注意】

ここからは渋谷事変の重大なネタバレを含みます。

甚爾の物語は、一度の死では終わりませんでした。
渋谷事変という大事件の中で、甚爾は予期せぬ形で再びこの世に姿を現します。

 

オガミ婆の降霊術による復活

渋谷事変において、オガミ婆という呪詛師が孫の肉体に甚爾の肉体情報を降ろす降霊術を発動しました。
通常、この術は肉体の情報のみを降ろし、故人の魂が降りてくることはありません。

しかし甚爾の場合は異なりました。
天与呪縛によって呪力が完全にゼロであるという特殊な肉体的特性が、通常では起こりえない現象を引き起こしたのです。
肉体情報とともに甚爾の魂そのものが降りてしまい、器となったオガミ婆の孫の魂を圧倒。
結果として、甚爾の意識と肉体能力を完全に備えた存在がこの世に復活しました。

 

特級呪霊・陀艮を瞬殺する圧倒的戦闘力

復活した甚爾は、特級呪霊・陀艮の領域展開内に闖入し、驚異的な戦闘力を見せつけます。
領域展開の必中効果が通用しないという天与呪縛の特性を活かし、陀艮を圧倒。
游雲の一撃で陀艮を瞬殺するという離れ業を演じました。

一度は最強の呪術師・五条悟を倒した男が、特級呪霊すら瞬殺するという事実は、甚爾のフィジカルギフテッドがいかに規格外であるかを改めて証明するものでした。

 

息子・恵との対峙

陀艮を倒した後、甚爾は本能のまま戦闘を求めて動き回り、やがて息子・伏黒恵と対峙することになります。

ここで甚爾は、目の前の少年に「名前は?」と問いかけます。
恵が「伏黒恵」と答えたその瞬間、甚爾の表情に変化が生まれました。
息子が「禪院」ではなく「伏黒」の姓を名乗っていること。
それは、恵が禪院家に売られることなく、伏黒の名のまま育ったことを意味しています。

 

「よかったな」:最期の言葉が持つ意味

恵が「伏黒」であることを確認した甚爾は、かすかに微笑みを浮かべ、「よかったな」と呟きます。
そして自らの頭部を呪具で貫き、自害しました。

この「よかったな」に込められた意味については、複数の解釈があり得ます。

「禪院家に売られなくてよかったな」という安堵。
「ちゃんと生きていてよかったな」という父としての感情。
あるいは、自分のような呪われた人生を歩まずに済んだことへの安心。
おそらくそのすべてが入り混じった一言だったのではないでしょうか。

注目すべきは、一度目の死の際に口にしたとされる突き放した言葉と、二度目の死で発した「よかったな」の間に存在する感情の変化です。
最初の死では、息子への想いを言葉にすることすらできなかった男が、二度目の死では明確に「よかったな」と口にした。
そこには、甚爾の人間性が回復する過程を読み取ることができます。

 

独自考察:伏黒甚爾が体現する「呪い」と「祝福」

ここからは、伏黒甚爾というキャラクターを「呪い」と「祝福」という対立概念から読み解く独自考察をお届けします。

「恵」という名に込められた祝福

『呪術廻戦』は「呪い」をテーマとした物語です。
呪霊、呪術、呪力。
作品世界は「呪い」に満ちています。
その中で「恵」という名前は異質な輝きを放っています。

「恵」は「めぐみ」と読み、恩恵・祝福・授かりものを意味します。
甚爾が息子にこの名を付けた行為は、呪いに満ちた自身の人生において、唯一「祝福」を肯定した瞬間だったのではないでしょうか。

自らは禪院家の「呪い」によって人生を破壊され、自分も他人も尊ぶことのない空虚な男となった甚爾。
しかし、自分が一度も受けることのなかった「恵み」を、息子の名に託した。
この行為には、「せめて息子には呪いではなく祝福を」という、言葉にはできなかった願いが込められていたのだと筆者は考えます。

甚爾が「恵」と名付けたからこそ、五条は「恵」を禪院家から守ることを選び、恵は「伏黒」の姓のまま成長し、呪術師として自分の意志で道を切り拓いていくことになりました。
名付けという行為そのものが、甚爾が息子に贈った最大の「祝福」だったのです。

 

禪院真希との構造的パラレル

甚爾と禪院真希は、同じ天与呪縛のフィジカルギフテッドを持つ者として、構造的なパラレルを成しています。
しかし、その選択は鏡像のように対称的です。

甚爾の選択:「逃げた」男

甚爾は禪院家から出奔しました。
虐待の記憶を抱えたまま家を出て、裏社会で殺し屋として生きる道を選んだ。
禪院家という呪いのシステムそのものを壊そうとはせず、そこから離れることで対処したのです。
しかし結果として、禪院家は存続し、同じような「呪い」を次の世代に引き継ぎ続けました。

真希の選択:「壊した」女

一方の真希は、禪院家を出るだけでは終わりませんでした。
最終的に禪院家に乗り込み、その呪いのシステムそのものを物理的に破壊します。
甚爾が目をそらした問題に対して、真希は正面から向き合ったのです。

この対比は、同じ条件を与えられた二人の人間がどれほど異なる結末を迎え得るかを示しており、甚爾という「前例」があったからこそ真希の選択がより鮮烈に映るという、物語的な構造美を生み出しています。

もちろん、甚爾の時代には仲間と呼べる存在がいなかったのに対し、真希には虎杖や乙骨といった仲間がいたという環境の違いも無視できません。
甚爾が「逃げた」ことを単純に責めることはできないでしょう。

 

3つの死に見る人間性の回復

甚爾の人生を「3つの死」として捉えると、そこには人間性が段階的に回復していく構造が浮かび上がります。

第一の死:社会的な死(禪院家での虐待)

幼少期の虐待は、甚爾から自己肯定感と他者への共感能力を奪いました。
これは肉体的な死ではありませんが、人間としての「生」を奪われたという意味で「社会的な死」と呼べるものです。
この時点で、甚爾の人間性はほぼ完全に損なわれています。

第二の死:一度目の肉体的な死(五条との再戦)

覚醒した五条に敗れて致命傷を負った際、甚爾は息子の情報を五条に伝えた上で、突き放すような言葉を残して命を落としたとされています。
この場面での甚爾は、息子のことを気にかけている気持ちを認めることができず、無関心を装っています。
しかし、わざわざ敵に息子の情報を伝えるという行動そのものが、完全な虚無の中にわずかに灯った「人間性の残り火」を示しています。

第三の死:二度目の肉体的な死(渋谷事変での自害)

渋谷事変で復活し、恵が「伏黒」の姓で生きていることを確認した甚爾は、「よかったな」と明確に父親としての感情を言葉にしました。
突き放した言葉しか言えなかった一度目の死から、「よかったな」と素直に口にできた二度目の死へ。
この変化は、甚爾の人間性が最後の最後で回復したことを示しています。

三度にわたる「死」を経て、甚爾はようやく父親として息子への想いを認めることができた。
それは悲しくも美しい、人間性の回復の物語です。

 

因果の外からシステムを破壊した者

甚爾の物語上の役割を俯瞰すると、彼は「因果の外から既存のシステムを破壊する者」として機能しています。

『呪術廻戦』の世界では、天元と星漿体の同化、六眼の術師の誕生など、繰り返される「因果」のサイクルが存在します。
この因果のサイクルに組み込まれた存在である五条悟や天内理子とは異なり、甚爾は呪力ゼロという特性によって因果の外に位置しています。

その甚爾が因果の仕組みに介入したことで起きた連鎖反応は、物語全体を決定的に変えました。

  • 天内理子の暗殺 → 天元と星漿体の同化サイクルの破壊
  • 五条悟の臨死 → 反転術式の独力会得と虚式・茈の覚醒(最強の呪術師の誕生)
  • 夏油傑への間接的影響 → 夏油の人間不信の深化と闇堕ちの加速

甚爾は呪術の世界の「プレイヤー」ではなく、盤面そのものを覆す「イレギュラー」でした。
呪力という共通言語を持たないからこそ、既存のルールに縛られず、因果のサイクルを外側から破壊できた。
この構造的な役割こそが、伏黒甚爾というキャラクターの物語的な意義の核心だと筆者は考えます。

 

まとめ

伏黒甚爾は、『呪術廻戦』において唯一無二の存在感を放つキャラクターです。

呪力完全ゼロのフィジカルギフテッドという天与呪縛。
禪院家の虐待によって壊された人格と、それでも消え切らなかった人間性。
最強の呪術師を一度は打ち倒した圧倒的な戦闘力。
そして、「呪い」に満ちた人生の中で唯一の「祝福」として息子に「恵」の名を贈った不器用な愛情。

甚爾の人生は決して幸福なものではありませんでした。
禪院家に壊され、虚無の中を漂い、二度にわたって命を落とした。
しかし、二度目の死に際して「よかったな」と微笑んだあの瞬間、甚爾はようやく「呪い」から解放され、父親としての「祝福」を取り戻したのではないでしょうか。

「術師殺し」の異名が示す恐ろしさと、「パパ黒」の愛称が示す人間味。
その両面を併せ持つからこそ、伏黒甚爾は多くの読者の心に深く刻まれるキャラクターであり続けています。

まだ『呪術廻戦』の過去編や渋谷事変を読んでいない方は、ぜひ原作で甚爾の活躍を追ってみてください。
文字だけでは伝えきれない、芥見下々先生の描く圧倒的な戦闘シーンと、行間に込められた感情の機微を感じ取ることができるはずです。

 

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