「俺みたいなクズでも崇高な何かになれるはずだ」
この言葉を胸に、貧困と差別の中で生き抜いてきたカシム。
アリババ・サルージャの幼馴染であり親友でありながら、最後は黒いジンへと変貌し、悲劇的な結末を迎えたキャラクターです。
本記事では、カシムのプロフィールから、アリババとの複雑な関係、霧の団でのリーダーとしての活躍、そして黒いジンへの変貌と最期まで、彼の生涯を徹底解説します。
カシムのプロフィール
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名前 | カシム |
| 声優 | 福山潤(成人時)/ 三瓶由布子(幼少期) |
| 年齢 | 享年18歳 |
| 身長 | 172cm |
| 血液型 | B型 |
| 出身 | バルバッド王国スラム街 |
| 所属 | 霧の団(幹部・実質的リーダー) |
| 家族 | 父(アルコール依存症)、妹:マリアム(故人) |
| 趣味 | 煙草 |
| 特技 | 節約 |
| 武器 | 黒縛霧刀(闘の金属器) |
カシムの名前の由来は、『アリババと40人の盗賊』に登場するアリババの兄・カシムからきています。
ただし作中では、アリババとカシムに血縁関係はありません。
ドレッドロックスの特徴的な髪型と、面倒見の良い性格で霧の団をまとめ上げた統率力が印象的なキャラクターです。
人物像・性格
面倒見の良いリーダー
カシムは優れた統率力の持ち主です。
スラム街で暮らす仲間たちをまとめ上げ、霧の団の実質的なリーダーとして組織を運営していました。
仲間思いで面倒見が良く、貧しい人々のために戦う姿勢は、多くのスラム住民から支持を集めていました。
深い劣等感と王族への憎悪
一方で、カシムの心の奥底には深い劣等感が渦巻いていました。
アルコール依存症で暴力的な父親のもとで育ち、貧困に苦しむ中、王族として育てられたアリババとの環境の差を常に意識せざるを得なかったのです。
さらに、スラム隔離政策による流行病で最愛の妹・マリアムを失ったことで、王宮への憎悪は決定的なものとなりました。
「崇高な何か」への渇望
「俺みたいなクズでも崇高な何かになれるはずだ」
この信念は、カシムという人物を端的に表しています。
貧しい生まれ、壊れた家庭、何も持たない自分。
それでも何者かになりたいという強い願望が、カシムを革命へと駆り立てました。
しかしこの願望は、アル・サーメンによって利用されることになります。
生い立ちと背景
幼少期、スラム街での日々
カシムは父親、妹のマリアムと3人でスラム街で暮らしていました。
父親はアルコール依存症で、子どもたちに暴力を振るう人物でした。
やがて父親に捨てられたカシムとマリアムは、アリババの母親に引き取られ育てられます。
この時期、カシムとアリババは兄弟同然の関係で過ごしました。
しかし、アリババの母親が亡くなった後、カシムは派手に盗みを働くようになります。
生きていくために、彼に残された選択肢は多くありませんでした。
妹マリアムの死
カシムの人生を決定的に変えたのは、妹マリアムの死でした。
バルバッド王国は貧民をスラム街に隔離する政策をとっており、スラム街では流行病が蔓延していました。
適切な医療を受けられなかったマリアムは、この流行病によって命を落とします。
王族が放置した政策のせいで、最愛の妹を失った。
この経験は、カシムの王宮への憎悪を不可逆的なものにしました。
アリババとの決別
アリババが王族として王宮に迎え入れられた時、二人の道は分かれました。
同じスラム街で育った兄弟同然の存在が、一方は王族として宮殿で暮らし、一方はスラム街に取り残される。
カシムの心に芽生えた感情は、友情だけでは説明できない複雑なものでした。
霧の団、義賊としての活動
霧の団とは
霧の団は、カシムを中心としたスラム街の住民たちによって結成された武装勢力です。
現王アブマド政権の打倒を目標に掲げ、活動を行っていました。
興味深いことに、霧の団の名目上の首領は「快傑アリババ」とされていました。
アリババの名前を使うことで、王族出身でありながら民衆の側に立つというイメージを演出していたのです。
実質的な指揮はNo.2のカシムが執っていました。
義賊としての活動
霧の団は単なる盗賊集団ではなく、義賊を自称していました。
国軍や貴族の家を襲撃して財宝を強奪しますが、その財宝のほとんどは貧民に分け与えられました。
貧しい者のために富を再分配する。
その活動は、スラム街の住民たちにとって希望の象徴でした。
能力・戦闘スタイル
黒縛霧刀(コクバクムトウ)
カシムが使用する武器は黒縛霧刀(コクバクムトウ)です。
これは「闇の金属器」の一つで、アル・サーメンから与えられた魔法武器です。
黒縛霧刀の能力は以下の通りです。
- 刀身から鉛ほどの重さの黒い霧を放出
- 霧で相手を捕縛する
- 巨大な球状の霧を作り出し、押しつぶす
通常の戦闘でも十分な威力を発揮しますが、この武器の真の力は別のところにありました。
黒いジンへの変貌
黒縛霧刀の本来の力は、持ち主が自らの体を刀で貫くことで発動します。
自分自身を核として、黒いジンを生み出すのです。
黒いジンの状態では以下の能力を使用できます。
- 重力魔法:周囲の重力を操作する
- 重力刀:魔力を込めた強力な斬撃
ただし、黒いジンへの変貌は代償を伴います。
変貌した者は理性を失い、魂が「堕転」した状態になってしまうのです。
物語での活躍【ネタバレ注意】
ここからは物語の核心に触れます。未読の方はご注意ください。
バルバッド編、アリババとの再会
物語の舞台がバルバッド王国に移ると、アリババとカシムは再会します。
カシムは霧の団のリーダーとして、腐敗した王政を打倒するために戦っていました。
一方のアリババは、迷宮攻略を経て力を得た金属器使いとして戻ってきました。
二人は協力して革命を目指しますが、やがて決裂します。
アリババは血を流さない革命を成し遂げようとしましたが、カシムはそれに納得できなかったのです。
アル・サーメンの介入
カシムの怒りと劣等感は、闇の組織アル・サーメンによって利用されました。
彼らはカシムに黒縛霧刀を与え、彼の心の闇を煽りました。
何も持たない自分にも力が宿りうることを証明したい。
その願望を巧みに操られたのです。
アリババが血を流さずに革命を成功させた後、カシムはクーデターを起こします。
しかしクーデターは失敗に終わり、追い詰められたカシムは最後の選択をしました。
黒いジンへの変貌
「俺にも力がある」
それを証明するため、カシムは自らを黒縛霧刀で貫きました。
黒いジンへと変貌したカシムは、理性を失い暴走を始めます。
王族への憎悪はジンの状態でも消えず、王政に関わった者たちを執拗に狙い続けました。
マギであるジュダルの支配下に置かれながら、カシムは破壊の限りを尽くします。
アリババによる救済
暴走するカシムを止めるため、アラジンはソロモンの知恵の力を発動します。
これによりアリババは黒いジンの内部に侵入することができました。
ジンの中で、アリババは堕転したカシムの魂と対峙します。
かつての親友、兄弟同然の存在。
アリババは必死にカシムに語りかけました。
そして、カシムの堕転した魂は救済されます。
魂が浄化されると同時に、黒いジンは消滅し、カシムは命を落としました。享年18歳という若さでした。
遺体は煌帝国によって回収されています。
アリババの中に残るもの
カシムの死は、物語の中で完全な終わりを意味しませんでした。
ルフの残存
カシムが死んだ後も、彼のルフの一部はアリババの体内に残り続けました。
この残存したルフは、後にアリババがアル・サーメンのイスナーンから呪いを受けた際、呪いの侵食を食い止める役割を果たしました。
死してなお、カシムはアリババを守り続けていたのです。
魔力の変質と融合
一方で、カシムのルフの残存はアリババの魔力を変質させる原因にもなりました。
アリババの体内には二つの魔力が存在するようになったのです。
後のガルダとの戦いで、アリババはこの魔力の正体がカシムのものだと気付きます。
そして戦いの中で、二つの魔力は一つに融合しました。
文字通り、カシムはアリババの一部となったのです。
形見の赤いピアス
カシムの形見である赤いピアスは、現在もアリババが身につけています。
かつての親友を忘れないという決意の表れであり、カシムという存在がアリババにとってどれほど大きかったかを物語っています。
カシムという存在の意味
構造的差別と個人感情の複雑さ
カシムというキャラクターを考える上で重要なのは、構造的差別と個人の感情が複雑に絡み合っている点です。
カシムの王族への憎悪は、単なる逆恨みではありません。
スラム隔離政策、貧困、妹の死。
これらは明らかに社会構造の問題です。
カシムの怒りには正当性がありました。
しかし同時に、アリババへの嫉妬という個人的な感情も混在していました。
同じ環境で育ちながら、一方だけが王族として迎えられる不条理。
この嫉妬心が、カシムの判断を曇らせた部分もあったでしょう。
『マギ』は、この複雑さを安易に解決せず、そのまま描いた点で優れた作品といえます。
アリババの成長に不可欠だった存在
カシムの存在は、アリババの成長に不可欠でした。
王族としての責任、民衆の苦しみ、そして親友の死。
カシムとの出会いから別れまでのすべてが、アリババを「王の器」へと成長させる糧となりました。
24巻のおまけ漫画で、アラジンは「理想の兄弟」としてカシムとアリババを挙げています。
作者自身が、この二人の関係を肯定的に評価していることの表れでしょう。
悲劇的だが救いのある結末
カシムの最期は悲劇的ですが、救いがないわけではありません。
堕転した魂はアリババによって救済され、死後もルフとしてアリババを守り続けました。
そして二つの魔力は融合し、カシムは文字通りアリババの一部となりました。
物理的には失われても、カシムの存在はアリババの中で生き続けている。
それは一つの救いといえるのではないでしょうか。
まとめ
カシムは、『マギ』における最も悲劇的なキャラクターの一人です。
- スラム街で育ち、貧困と差別に苦しんだ
- 最愛の妹マリアムを王政の失策で失った
- 霧の団のリーダーとして義賊活動を行った
- アル・サーメンに利用され、黒いジンへと変貌
- アリババによって魂を救済され、18歳で死亡
- 死後もルフとしてアリババを守り、最終的に一つに融合
「俺みたいなクズでも崇高な何かになれるはずだ」
その願いは、ある意味で叶ったのかもしれません。
アリババという「王の器」の一部となることで、カシムは確かに崇高な何かになったのですから。
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